2010年9月5日
高橋紡さんが伝える、初心者でも楽しめるアウトドア
今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは、高橋紡さんです。
ビギナー向けのアウトドア情報を発信しているフリーライターの「高橋紡(つむぎ)」さんは、山の初心者、特に女性をターゲットにしている雑誌「ヒュッテ」を手がけるなど、幅広い活動をされています。 今回はそんな高橋さんに、女子だけのキャンプや初心者向けの登山のお話などうかがいます。
“アウトドア”はライフ・スタイル
●今回のゲストは、フリーライターの高橋紡さんです。よろしくお願いします。
「よろしくお願いします。」
●現在高橋さんは、フリーライターとして、アウトドア系の雑誌で様々な情報を発信していますが、どのような情報を発信しているんですか?
「主にアウトドア雑誌や自然系の雑誌で、料理や家、アウトドア・アクティビティのルポを書いています。例えば料理だと、オーガニックな食材を使ったレシピの紹介だったり、天然の木で作った家の紹介をしています。主に、登山やキャンプ、外で作るご飯の情報を提供している雑誌で記事を書いています。」
●高橋さんは、元々アウトドアが好きで、アウトドア関係の仕事を始めたんですか?
「そうですね。私は元々、出版関係の仕事をしていたんですけど、そのときは住宅雑誌や育児関係の雑誌、料理関係の雑誌を担当していたんですね。フリーになって、どういったジャンルの記事を書こうか考えたときに、“本当にずっとやっていきたい”と思ったジャンルが“アウトドア”でした。」
●なぜ、そう思ったんですか?
「やっていて1番面白くて、大げさなんですけど、自分の生き方の信念と合っているような気がしたんです。仕事なんだけど、仕事とは思えないぐらい熱中できるジャンルがアウトドアでした。」
●先ほど、「生き方の信念とアウトドアが合っている」と仰いましたけど、私のイメージでは、アウトドアって、趣味の一部で、生き方とは別だと思っていたんですが、高橋さんにとっては、一緒だったということですか?
「お天気がいい週末にキャンプに行ったり、登山に行ったりするのは趣味の一環という人ももちろんいると思いますが、ライフ・スタイルとして、アウトドアが自分の生活にかなり根付いている人もいるんですね。私にとって、外で過ごすというのは、仕事であり、ライフ・スタイルになっています。」
●そうなんですかぁ! そういうライフ・スタイルってすごく興味があるんですけど、具体的にはどういったライフ・スタイルなんですか?
「普段は東京で仕事をしているんですけど、仕事が終わったら、山や海、キャンプ場などに遊びに行くんですね。遊びに行くのも1日だけじゃなくて、フリーという立場ですので、まとまった休みが取れますので、1週間~2週間ぐらいかけて行きます。今は忙しくて、3日ぐらいが精一杯ですね。」
●いいですねぇ! 確かに会社員だと、どうしてもお仕事が中心になって、お休みの日ぐらいにしか外に遊びにいけないという感じですけど、高橋さんの場合は、生活の一部に自然が入り込んでいるんですね。
「そうですね。」
●そういう生活をしてから、自分の中で変わったことってありますか?
「かなり変わりましたね。よく周りから『性格が変わった』って言われるんですけど、会社員のときって、ルールだったり、色々なことに縛られて、精神的に辛かったところがあって、すごく内向的だったんです。だけど、アウトドアを始めるようになってからは、自分を解放できるようになったり、細かいことが気にならなくなりましたね。明るくなりました。」
●小さいことは気にしないということですね(笑)。
高橋さん流、キャンプのやり方
●高橋さんは現在、以前この番組に出演していただいた写真家の「野川かさね」さん、料理研究家の「山戸ユカ」さんなどと一緒に、“noyama”というグループで活動しているということなんですが、どういった活動をしているんですか?
「“noyama”というグループは、さっき紹介していただいた2人に加え、木工作家の『しみずまゆこ』の4人で活動をしているんですけど、主に自然やアウトドアの出版活動やイベントを手がけています。」
●noyamaの皆さんで山に行ったりしているんですか?
「そうですね。いくつかの雑誌の連載をしているということもあって、2ヶ月に1回は必ず、山に登ったり、外ごはんを作ったりしています。今では、プライベートで4人が揃うということは、なかなかないんですが、都合が合う人たちと集まって、山に登ったり、カヤックに行ったりしていますね。」
●私も先日、高尾山に初めての登山に行ってきたんですけど、女性だけで山に登ったり、キャンプをしたりするのは、大変だったり、男手が必要になるときがあるんじゃないかなって思うんですが、実際はどうなんですか?
「必ずしも、女性だけで動いているというわけではないんですけど、結果として女性だけになってしまっているんですが、重い物は、キャンプの場合は大抵、車で行くので、車で運んで、着いたら下ろしちゃいます。多少重い物でも、頑張って運びますね。登山の場合は、車は使えないので、重くて自分が歩けなくならないように、持っていくものを制限したり、他の人に少し持ってもらうということをしています。」
●ちなみに、noyamaのメンバーで、初めてキャンプに行ったのは、どこだったんですか?
「初めてかどうかは分からないんですけど、すごく印象に残っているのが、富士山の麓にある“朝霧高原・キャンプ場”には、何度も何度も行っているんですね。天気がいいと、富士山がものすごくキレイに見えるんです。地面が芝生で、とても気持ちがいい場所で、都内から3時間ぐらいで行けるんです。そこには“Mサイト”というところがありまして、私たちにとって、そこがベスト・ポジションなんですね。キャンプに行くとなったら、大抵その場所に行っています。」
●そこがなぜベスト・ポジションなんですか?
「富士山がよく見えるという点と、ハンモックを張るための木のポジションがベストなんですよ!」
●ハンモックっていいですね!
「いいんですよ! あと、水道やトイレが近くにあるという点もありますね。」
●私は、キャンプをこれまで仕事でした1回しかないので、基本的なことも教えてほしいんですけど、キャンプをするときには、水道とかって近くにあるんですか?
「キャンプ場だったら大抵、広大な敷地の中に、水道とトイレが一緒になった施設がいくつかあるんですけど、タンクの中に水を汲んで運んでいくのって、結構大変じゃないですか。トイレも遠いと、行くのがおっくうになってしまうので、ほどよい距離にテントを張るようにしています。遠いところに張ってしまうと、色々と不便なので、キャンプ場に着いてから、ある程度見回って、ベストなポジションを見つけて、テントを張るようにしています。」
●キャンプに持っていくものって、どういう物が必要なんですか?
「目的にもよるんですが、キャンプ場ってレンタルしてくれるものが、かなり充実しているので、テントや寝袋は貸してくれるんですね。なので、基本的な装備がなくても、キャンプは楽しめると思うんですが、食べ物は持っていった方がいいですね。さらに、食べ物を温かい状態で食べるための道具、例えば、2バーナーとかシングルバーナーといった、家で使うガスコンロのようなものや、やっぱり、ビールは冷たく飲みたいので、長時間冷やしてくれるようなクーラーボックスを持っていくのがいいと思います。」
●ということは、現地で、バーナーを使って、料理をするんですか?
「そうですね。やっぱり、できたてホカホカのご飯って、何物にも代え難い、美味しいものですよね。外で温かいものを食べるのは、基本ですね(笑)」
●いいですね(笑)。その温かい料理と冷たいビールをいただくんですね。キャンプに行きたくなってきました(笑)。
頂上を目指すだけが登山じゃない
●高橋さんは“ヒュッテ”という雑誌を刊行したということですが、“ヒュッテ”はどういう雑誌なんですか?
「山と渓谷社さんから出ている、女性向けの登山雑誌です。編集部員が何人かいて、その中のいち編集者として参加させていただいています。今、若い人の間で登山が人気で、日帰り登山に行っている方も多いかと思うんですけど、もっと高い山に挑戦してみたい、もっと本格的な登山をしてみたいという人に向けて、情報を提供することを目指して、刊行しました。」
●私も先日、高尾山に行ったときに、若い女性の方がかなりいたんですね。今は高尾山のような低い山がメインだけど、これからは、高い山にも女性が登るようになってくるんですか?
「なってきますね。私自身、体力が全然なくて、重い荷物も全然背負えず、高尾山にも何回か登ったことがあるんですけど、高尾山でも結構辛かったんです。そうはいっても、登山を始めると、登ってみたい山がいくつか出てくるんですが、それらの山って、自分の体力や知識、経験などでは登ることができない、高嶺の花だったりするんですね。この間『こういう登り方もあるんだ』と知ったことがあって、それは“ロープウェイを使う”という方法なんですね。」
●それは、私も高尾山を登るときに使いました(笑)。
「(笑)。それは『とんでもないことだ!』と怒る方もいるかと思いますが、体力にあった楽しみ方ってあると思うんですね。私の場合は、今回、西穂高という山に登ったんですが、とてもじゃないけど、頂上まで登れないような山の8合目まではロープウェイで登って、残りの2合を登るという方法で登りました。 それでも、頂上まで3~4時間ぐらいはかかったんですけど、頂上に行ったら、そこに行った者しか見られないような、ものすごくキレイな景色が広がっているんですね。それを見て降りてきたんですけど、『こういう楽しみ方もあるんだな』と思いました。」
●私も、高尾山を登ったときに、例えば、絵を描いている方とか、写真を撮っている方とかいて、山って色々な楽しみ方があると感じたんですけど、それに関してはどう思っていますか?
「“必ずしも頂上を目指さなくてもいい”と教えてくれた方がいたんですね。それまで私は、体力がないことにコンプレックスがあって、山に行くのが怖かったんですね。でも、頂上を目指さないで、キレイな花が咲いているルートだったり、眺めがいいルートだったり、頂上には行かないで、気持ちいい道をずっと歩くという楽しみ方もあるということを教えてもらったんです。 だから、写真を撮るのもいいですし、景色を見にいくのもいいし、途中まで登って、本を読んで帰ってくるという登り方をしている人も多いので、頂上を目指すだけが登山じゃないということを、登山を始めてから思いました。」
“保存食”を後世に残していきたい
●高橋さんの今後の夢を教えてください。
「私はずっと、細々としているライフ・ワークがありまして、それは、山に住んでいる人たちが、どういったものを食べているかということにすごく興味があるんですね。山に住んでいる人たちって、冬が厳しいので、保存食を作る文化が根付いているんですね。取材に行くと、その保存食を食べさせていただける機会があるんですけど、保存食って、段々必要がなくなってきていると思うんですね。そういった保存食が忘れられないように、ネットなどに残せたらと思っていて、そういう活動をしています。」
●確かに、今の時代、保存食って、漬物とか粕漬けぐらいしか思いつかないんですけど、まだまだ保存食を食べている人もたくさんいらっしゃるんですね。
「そうですね。今は風物詩みたいになってしまっていて、必要というより、文化として残っているんですね。例えば、ワラビを塩漬けにして保存しているおばあちゃんがいるんですけど、そのワラビをごちそうとして食べているのではなくて、他に食べるものはたくさんあるのにも関わらず、自分が子供のころから食べ続けてきた味だから、作る季節になったら、作っておくという習慣が根付いているんです。そういうものはすごくいいのに、失われつつあることなので、それを知っておくのは面白いなと思って、取材しています。」
●ワラビ以外にも、保存食ってあるんですか?
「ワラビは春にでてくる山菜なんですけど、ウドだったり、フキだったり、タケノコなども、春になるとでてきますので、それを保存食にしている地域もたくさんあるんですね。」
●それを漬物や粕漬けにしたりするんですか?
「そうですね。塩や味噌に漬けるのがポピュラーで、タケノコを塩漬けにすると、半年もつんです。食べるときは、洗ったり、煮たりして、塩を抜いて食べるんです。フキだと、味噌に漬けて食べたりしますね。」
●今って、スーパーに行くと、タケノコとか、季節の物もいつでも買えると思うんですけど、そういう風に自分で保存をすると、食べ物を大切にするようになると思うんですね。
「そうなんです! まず、山菜を山に採りにいかないといけないんですが、それがすごく楽しいんですね。だから、食べ物に関しては、大切にするようになると思います。春に採ったものを保存して、冬になったときにいただくという、人の知恵・文化というのが面白いと思っています。」
●キャンプに関して、「今後、こういった場所でキャンプをする」という予定はありますか?
「キャンプをするには、秋が1番いいんじゃないかと思っていて、白樺の林の中でテントが張れる場所がいくつかあるんですね。下は芝生でフカフカしていて、落ち葉がたくさん落ちているという場所が長野県や信州地方にはたくさんあるので、毎年秋になったら、食べ物を車にたくさん積んで行っています。」
●それはどこか教えてもらえますか?
「長野県にある、五光牧場というところで、そこは大好きなキャンプ場なんです。そこで毎年イベントがあるんですけど、それもあって、よく行っています。」
●ぶしつけなお願いなんですが、もしよければ、私もそのキャンプに連れていっていただけませんか?
「もちろんいいですよ! キャンプは人数が多い方が楽しいので、是非来てください。」
●そのときは、よろしくお願いします! というわけで、今回のゲストは、フリーライターの高橋紡さんでした。ありがとうございました。
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