今回から2週に渡って、“長澤ゆき・初めてのキャンプ体験リポート”をお送りします。以前から「キャンプに行きたい! 私をキャンプに連れてって!」とスタッフに頼んでいた長澤でしたが、ついに実現しました。師匠はバックパッカー、そして紀行家のシェルパ斉藤さん。そして、キャンプ・サイトは八ヶ岳の南山麓にある、斉藤さんのご自宅の敷地内にある林の中。今回はそのキャンプ体験リポートの第1弾! テント設営、焚き火、アウトドア・クッキングと盛りだくさんのリポートをお送りします。
●私たちは今、八ヶ岳南麓にある、シェルパ斉藤さんのご自宅に来ています! 斉藤さん、よろしくお願いします!
「よろしくお願いします。」
●前回、この番組に出ていただいたとき、「キャンプをしたことがないので、もしよければ、キャンプの手ほどきを!」とお願いしました。なので、本当に来ちゃいました(笑)。
「本当に来たんですね(笑)。半分、社交辞令だと思っていたんですが、本当に来ていただいて嬉しいです。ただし、手ほどきはしませんよ。自分でやってみないと分からないし、そもそも僕は、手ほどきするほどのものを持っていないですよ。そもそも『キャンプって何?』って聞かれても分からないですよ(笑)。なので、長澤さんが新たなキャンプを作って、それを僕がアシストするという形で楽しんでいきたいなと思ってます。」
●私のキャンプを作っていいですか!?
「どんなものになるのか知りませんけどね(笑)。そもそも“アウトドア・ライフ”って、日本語にしたら“野外生活”じゃないですか。だから、キャンプって何をするのかというと、衣・食・住の“食”と“住”を野外に持ち込むことなので、それを順番にやっていけばいいんじゃないですか。食べるのは夜にやるとして、明るいうちに自分の住処を作らないといけないですよね。それを自分の手で作って、翌朝には何もなかったかのように片付けて去っていくのがキャンプの基本だと思います。」
●では、まずは自分の寝床を作らないといけないですね!
「それをしないと、今日寝られないですからね。」
●では早速作りにいきましょう!
「僕は作りませんよ(笑)」
●そうですよね!(笑) 早速作りますので、温かく見守っていてください!
●では早速、テントを張りたいと思いますが、実際に山やキャンプ・サイトに行ったときもそうだと思いますが、テントを建てる場所は平らなところがいいんですよね?
「その通りですね。それと、テントをちゃんと張るには“ペグ”という杭を打たないといけないので、それを打てるところと、ちゃんと張ろうとすると面積を取るので、十分なスペースがあって障害物がないところを選んでください。今回は、我が家の隣にある森でやろうと思っていますが、ここは葉っぱが(地面に)詰まっていてフワフワなので、テントを張りやすいし、寝心地もいいと思いますよ。」
●今夜この地面の上で寝るわけですから、硬いと背中が痛くなりそうですよね(笑)。では、テントがどのぐらいの大きさなのか確認するために、テントを出したいと思います。今回はスタッフのテントを借りてやっていきたいと思います。
「このテントはモンベルさんの“ムーンライト”というテントなんですけど、なぜ“ムーンライト”という名前が付いているか分かりますか?」
●“ムーンライト(月明かり)”ですよね。ちょっと分からないです・・・。
「“月明かりでも建てられるぐらい簡単”ということで、この名前を付けたみたいです。だから、こんだけ明るいときに建てようとしてるんですから、建てられなかったら困りますよね。」
●それは恥ずかしいですね! それではテントを収納袋から出していきたいと思います。アルミのポールの棒がたくさん出てきましたね。これが支柱になる部分なんでしょうね。持ち上げたらどんどん形になっていきますね。テントというと、ポールを1本1本繋げていかないといけないと思っていたんですけど、これはすごく便利ですね! テントを1人で立てるケースって実際にあったりするんですか?
「僕はいつも1人旅だから、立てるときはいつも1人ですよ。でも、こんなに大きなものは建てませんよ。これは家族で使うファミリーキャンプ用ですね。」
●ということは、何人かで協力しながらやると、より早く建てられるんですね。
「それもそうだし、やってると、森に家を作る感覚だから、楽しいですよね。」
●確かにそうですよね! 次のステップは、4つの輪をポールに入れると・・・。やったー! 入ったー! さっき立てたポールの穴にはまりました! さっきまで重なっているだけだったのが、ドーム状になってきました。なんだかゴールが見えてきました!
「でも、今の状態だと、布の部分が平面的じゃないですか。これを立体にするには、輪っかをクロスしているところに付けないといけません。」
●段々テントっぽくなってきました! ・・・できました!
「これで完成じゃないですよ(笑)。このままだと、雨が降ったりすると濡れてしまうんですよね。それを防止するためにジャケットが必要です。」
●それが最後に残ってるこれですね! これを被せればいいですね!
「そうですね。結局全部教えてますね(笑)」
●(笑)。これをかければ・・・。
「これで8割方できましたね。そして、最後の仕上げとしてペグを打ちます。最後に『ここでいいのか』という確認をしてください。ここは傾斜が若干あるじゃないですか。(寝るとき)どっちを頭にするのか、もう少し動かした方がいいのかなどを考えながら調整して、それで決まったらペグを打ってください。それで終わりです。」
●それでは打ちます! ・・・できたんじゃないですか!? 我が家ができました!
「では、今日寝るところですから、中に入ってください。」
●おー! 広い! 私が寝転がって両手を広げても十分なスペースですね! 気持ちいいー!
●無事にテントを建てられました!
「これで寝る場所ができましたね。」
●では、次は何をすればいいですか?
「次は“食”ですよね。うちでは焚き火ができるんですよ。今、キャンプ場で焚き火ができるところって少なかったりするんです。焚き火台を持っていけばできるところもありますが、うちでは太古の昔から人がやってきた焚き火をすることができるんです。むしろ、それをしたくて田舎暮らしをしていたりするんですけどね。そして、焚き火に使う燃料は、森の中で自然に倒れた木や落ちた枯れ枝などを集めてきて、“森から恵みをいただく”という形をとっているんですね。
今の時期だと、木が芽吹いて枝が成長して、秋から冬になると風に揺られたり、雪の重みなどで地面に落ちて、地面に還る前に僕たちがいただいています。そうすることで、森もキレイになりますし、暖を取る以外にも食事にも使えますし、明かりにもなるんですよ。そういう意味では、焚き火はすごくいいシステムだと思うんですね。それを是非体験してもらいたいので、手袋と倒木を集めるためのバッグを用意したので、適当に集めてきてください。」
●分かりました! 焚き火に使う木を集めてきます!
※そして長澤は、焚き火をするための木を集めに、シェルパ斉藤さんの家の隣にある森の中に入っていきました。
●焚き火をするための枝集めをしたいと思います。お、早速森の入り口のところに細い枝がありますね。これは最初に火をつけるための燃料として使えそうなので、持っていこうかな。・・・そして、よく乾燥してて燃えそうな枝がありますね。これも持っていこう。・・・枯れ葉も入れて・・・あと、「松ぼっくりが火をつけるのにいい」って聞いたことがあるんですよ。それも探してみましょう。枯れ葉を踏みながら歩く感じがいいですよね。あ! 松ぼっくり、ありました! 5個あったので、持っていきます。ここには色々ありますね!
※順調に枝などを集めた長澤は、シェルパ斉藤さんのところに戻りました。
●バッグいっぱいに集めてきました! 色々な種類の木があって驚きました。
「そうなんですよね。これによって木を知ることができますし、どれが燃えやすいのか分かってくるんですよ。では、これを使って、自分なりに焚き火をしてみてください。今回特別に着火剤を渡します。この着火剤を使って、どのように燃やせばいいのか考えてやってみてください。」
●分かりました! それではやってみます! まずは“やぐら”を組んでみたいと思います。やぐらを組むようにすると、空気がよく入って燃えるんじゃないかと思うんですね。なので、よく燃えるように太い木を中心に、真ん中には細い枝を入れて、そこに火をつければ、その細い木が燃えて、その火が外側のやぐらに移って、いい感じに燃えるんじゃないでしょうか。あと、拾ってきた松ぼっくりが着火剤になると聞いたことがあるので、それも真ん中に入れていきたいと思います。・・・できました!
「できましたか? では、この着火剤を使って、火をつけてみてください。」
※実際に火をつけてみます。
●今、着火剤に火が点きました。これでいいのかな? 風を起こした方がいいのかな?
「いや、そのままでいいと思います。これ、初めてやって、いい加減にやってますけど、結構理にかなってますよ。最初『え?』って思いましたけど、多分無事に焚き火ができますよ。」
●本当ですか!? 才能あるかも!
「要は空気がちゃんと入って、細い木に燃え移っていくようにすればいいんですけど、実はこれ、そういう風になってますよ。ただ、これは若干組みすぎなので、火が大きくなりすぎる可能性があります。この組み方はキャンプファイヤーの組み方で、キャンプファイヤーをするには火を大きくする必要がありますけど、今回みたいな少人数でやるキャンプの場合だと、小さい焚き火を長くすることが大事になってくるんですね。」
●そうですよね。この周りでマイムマイムを踊るわけじゃないですから、そこまで大きくする必要はないですよね(笑)。
「でも、理にかなってるから、ちゃんとついてますよ。それに、長澤さんは乾いた木をちゃんと持ってきているので、それほど煙が出ずにキレイに燃えてますね。初めてでこれだけできるなんて、焚き火うまいです!」
●よかったです! 嬉しいー!
「なんだ、つまんない(笑)。できちゃったじゃないですか(笑)」
●今日はキャンプをさせていただいたり、すごく色々としていただいたので、ささやかではありますが、ご飯を作って、よければ召し上がっていただきたいなと思います。
「楽しみです!」
●今回のメニューなんですが、まずはポトフを作ろうと思います。
「さっきから茹でてるのはそれなんですね。」
●そうなんです。ジャガイモやニンジン、タマネギ、ベーコンなどを入れて作っています。そして、しめじのホイール焼きを炭火で作ります。そして、焼きリンゴも作らせていただきます。そして、昨日の夜に「タンドリーチキンを作ろう」と思って、ヨーグルトとカレー粉と調味料を入れて、漬け込んだ鶏肉を持ってきましたので、後で直火で焼きたいと思います。
「ビールに合いそうですね!」
●実は私もそれが楽しみなんです(笑)。そして、ご飯も炊こうと思うんですが、実は私、飯ごうでご飯を炊いたことがないので、炊き方が分からないんですよ。
「ここにお米があるということは、これから炊くんですね。」
●やっぱりおかずだけじゃなく、ご飯も食べたいと思ったんですけど、計量カップもないので、どうしたらいいのか分からないんですよ。
「まず、お米を研いだら、お米の表面から指の第一関節と第二関節の中間ぐらいまで水を入れてください。それで、今回のように焚き火があるときは、焚き火の上に掛けておいてください。よく“はじめちょろちょろ”とかいいますけど、一番失敗しないコツは“グツグツさせること”です。グツグツさせたら、次第に香ばしい匂いに変わっていくんですよ。そのときに火から遠ざけてあげて、15分ぐらい蒸らせておけばオッケーです。」
●分かりました! では早速やってみたいと思います!
「ところで、この飯ごう、スタッフのものですか?」
●そうなんです!
「すごく年季が入ってるなぁ。」
※実際にご飯を炊き始めます。
●では、ご飯を炊いていきたいと思います。
「七輪を使って炭火で炊きましょう。よく“はじめちょろちょろ中ぱっぱ”っていうじゃないですか。でも炭火で炊くと、炎がいきなり上がってこないので、結果的に自然と“はじめちょろちょろ”になるんですよ。なので、七輪に乗っけるだけでいいと思います。」
※炊き始めてからしばらくして、湯気が出てきました。
●湯気が出てきましたね!
「今、“中ぱっぱ”の状態で、グツグツいっていると思います。」
●そうなんですね! 見たいんですけど、見ちゃいけないんですよね?
「我慢しましょう。」
●目安みたいなものはあるんですか?
「今、湯気が出てるじゃないですか。匂いを嗅いでみてください。焦げてる匂いじゃなくて、香ばしい匂いがしませんか?」
●そうですね。おせんべいのような匂いがします。
「あと、お餅がちょうどいい具合で焼けてきたときの匂いに近いかもしれないですね。そんな匂いがしてきているので、それが見極め時ですね。ただ、おこげを作ってみたいので、もう少し火を当ててから、遠ざけます。」
※その間に、タンドリーチキンが焼けました。
●私が下ごしらえしてきたタンドリーチキンですが、途中から斉藤さんに様子を見てもらってましたが、いい感じに焼けてきました! 味に自信ないですが(苦笑)、どうぞ召し上がってください!
「長澤さんも一緒に食べましょう。」
●はい! 今日はありがとうございました!
「ありがとうございました。いただきます・・・お、うまい!」
●よかったです! 昨日の夜にヨーグルトとカレー粉とケチャップとレモン汁と塩・コショウをして漬け込んだんですよ。
「だから、中まで染みこんでるんですね。美味しいです。」
●よかったです! 炭火で焼くと柔らかくてジューシーになりますね!
「タンドリーチキンって、本場ではみんな炭火で焼いてますからね。表面がカリッとして、中がジュワーっとしているのは、炭火ならではだと思いますよ。本当にいい具合に焼けてますね。」
●でも、焼いたのは斉藤さんなんですよね(笑)。
※そして、ご飯がまもなく炊けます。
●ご飯の調子はどうですか?
「多分大丈夫だと思います。でも、たとえ失敗していたとしても、こういう空の下で食べると、なんでもご馳走になりますよね。では、開けます!」
●おー! すごくいい感じに炊けてるじゃないですか! お米が立ってる!
「では、ほぐします。」
●こんなにもキレイに炊けるんですね! これ完璧じゃないですか!
「いい感じにおこげもできてますね。」
●お米のいい香りがしますね!
「では、シェラカップに入れて食べてみましょう。」
●あ、このシェラカップ、マークが付いてますね!
「うちのオリジナルです(笑)」
●可愛いですね(笑)。では、いただきます!
「・・・美味しいですね! これ、おかずなくても食べられますね。」
●お米の味がすごくしますね。そして、おこげのところが香ばしくて最高ですね!
「本当美味しいですね!」
●ご飯だけで何杯もいけそうですね!
※食事も終わり、シェルパ斉藤さんのご自宅の庭にある竪穴式住居「イオ」の中で焚き火を囲んで。
●美味しいご飯をいただきました。
「気持ちいい場所で(食材を)炭火で焼くと、何を食べても美味しいですよね!」
●いつも食べてるものでも、何倍も美味しくなりますよね!
「お肉も、オーブンで焼くよりもじんわり焼けて、カリッとしていてじんわりしてましたね。お米も炭火で炊いたから、すごく美味しかったですよね。やっぱり、太古の昔から人間が営んできて『気持ちいいな』と思っていたことには敵わないというのは面白いですよね。」
●そうですね! そして、場所を移動してきました。
「ここは、うちにある竪穴式住居の中ですね。以前、紹介したことがあると思いますが、縄文時代の人たちは“恐らくこういう風に建てたんじゃないか”と思うように再現したところの中で焚き火をやっています。」
●結構大きな木を入れてますけど、これは何という種類の木ですか?
「森の中で倒れていた木をそのまま持ってきたんですよ。何が僕たちの元に来るのかは森の恵みなので、何が倒れるかは分からないんですよ。それが面白かったりするんですけどね。それで、今燃やしているのはヤマザクラですね。今ちょっと香ばしい匂いがしていると思いますが、燻製を作るときには、ヤマザクラを使うんですよ。なので、今、僕たちはいい感じに燻されてますよ。」
●もし、私たちがサーモンだったら、美味しいスモークサーモンになっているところですね(笑)。こうやって、焚き火を見ながら話をすると、ホッとしますね。
「キャンプって色々な楽しみ方があると思いますが、僕のキャンプって“火を扱う”ことになるのかなと思いますね。だって、都内で庭がある家でも、焚き火をしたら近所から『煙たい』とクレームが来ると思うんですね。でも、人間は昔から火と付き合ってきてますし、そういったことを体験できるというのがキャンプの魅力だと思いますね。
だって、痛快じゃないですか。今、こういう風に見ているだけでもすごく癒されますし、これを使って料理をしたら全部が美味しくなりますからね。それに、今、火を見ていますけど、一瞬でも同じ火ってないじゃないですか。いつも形が違いますし、この瞬間にしか見られないのが面白いですよね。そして、“火を扱える”のって、カッコいいじゃないですか。だから、今回、長澤さんが一発で焚き火を起こせたときはムッとしましたけどね(笑)。でも、やっぱりカッコいいなって思いましたね。」
●では、この後は美味しいお酒をいただきましょう! そして寝て、明日を迎えたいと思いますが、明日はどうしましょうか?
「僕の本職はバックパッカーなので、バックパッキングの世界を少しお見せしたいと思います。」
(この他のシェルパ斉藤さんのインタビューもご覧下さい)
初めてのキャンプ体験。色んな発見があって楽しかったです。中でも、テントを建てて火を起こして飯ごうでご飯を炊いて…。自分の暮らしを自分で作ってみると、少しだけたくましくなれた気がしました。
今回お世話になったシェルパ斉藤さんは、旅人のために、敷地内にあるゲスト・ハウスやキャンプ・サイトを開放しています。ただし、事前に問い合わせて予約を入れてください。使用料はカンパ制となっていますが、バックパックや自転車、バイク、車など、旅のスタイルによって目安の金額が変わります。寝具やバーナー、かまど、焚き火台などのレンタルもあります。
そして、斉藤さんの奥様「京子」さんが切り盛りしているカフェ&ギャラリー「チーム・シェルパ」が母屋のとなりにあります。京子さん手づくりの特製ベジタブル・カレーは絶品! コーヒーやチャイ、ケーキも美味しいですよ。また、ギャラリーには斉藤さん愛用のアウトドア・グッズや著書なども置いてあります。
◎営業日:金・土・日・月の4日間と祝祭日(原則)
◎詳しい情報:チーム・シェルパのホームページ